2011年12月21日水曜日

連続複利は対数リターンと呼ぶべきではないかというお話

証券アナリスト試験の問題で連続複利の計算が必要な場面はほとんどないのですが、「連続複利だとして計算する」といった指示の例はあります。

1. 連続複利はグロスの年利子率の自然対数

(1) 連続複利の計算
まず最初に、連続複利の(年)利子率は、(1+通常の年利)の自然対数だと記憶しましょう。
こうして計算される連続複利は、ある期間(通常は1年)の間に複利の計算を無限回した場合の利率だとされています。
年複数回(n回としましょう。)の複利計算は、年利をrとすると、rを複利計算の回数nで割った値に1を足した結果をn乗して、年末に受け払いする元利合計を求める方法でした。求める連続複利の年利をrとしてこの回数を無限大にすると、eのr乗(eは2.7182....という実数)になります。
これが、連続複利の場合の1円当たりの年末の元利合計ですが、eのr乗は、1+rよりも大きな値になります。同じ年利表示でも、複利計算の回数を1、2、3・・・と増やすほど年末の元利合計が大きくなって行って、最終的にeのr乗に落ち着く、というわけです。

(2) 年1回利払いの利率iを連続複利に換算する方法
次に、1円について年末に支払うiという利息を、年末に同じ結果になるような連続複利の年利率rに書き換えるにはどうすればよいでしょうか。
年表示でrの連続複利では、年末の元利合計はeのr乗円になりますから、これが1+i円に等しいと置きます。
1+i=eのr乗という式を満たすrを求めるには、両辺の自然対数をとります。ln(1+i)=ln(eのr乗)=rとなって、rを求めることができます(対数とその計算法則については、私がやっている証券アナリスト講座のサイトに掲載してあるpdf「証券アナリストの数学」などを参照してください)。

2. 連続複利に書き換える理由

(1) 計算が簡単になる
実際の市場では連続複利表示の取引など行われていないのに、なぜ連続複利に書き換えるのでしょうか。
1つは、対数の計算法則のおかげで何かと便利なことがある、ということでしょう。2年間を例にとって、1年目の年利がi1で2年目の年利がi2だとすると、2年間の累積の金利部分を計算するには(1+i1)(1+i2)-1になります。しかし、連続複利(グロスのリターンの対数)に書き換えれば、r1+r2という足し算で計算できます。
最初に書いた「連続複利だとして」計算する、というのは、例えば5年間の累積リターンの計算は(1+収益率)を5個つなげて掛け算せずに、足し算で計算してよい、という意味です言い換えると、r1+r2+r3+r4+r5です。累積額は、(eのr1+r2+r3+r4+r5乗)で求めます。5年間の平均も、つなげた掛け算の5乗根を計算せずに、5年分を足した(r1+r2+r3+r4+r5)を5で割れば計算できます。
こうした結果は、どれも対数の計算法則のおかげです。

(2) 不確実な資産に関する問題を方程式で解ける場合が多い
もう1つは、資産のリターンのような将来の不確実な値を連続複利で表現する場面で、それが正規分布にしたがうという仮定を追加します。正規分布に関係する数学的な問題は答えが見付かっているので、方程式を作って解く方法でファイナンス関係の問題(期待値の計算問題)の答えが出せます。そうすると、いかにも科学的な見た目で、資産評価の問題の答えをきれいに提示できるわけです。

3. 対数リターンという言い方の方が分かりやすい

以上のように、連続複利を使う理由は、便利だということに尽きます。それなら、「連続複利」などというありもしない名前ではなく、「対数リターン」と呼んだ方がずっとすっきりするでしょう。実際、2000年以降に書かれたファイナンスのテキストでは、対数リターン(log return)という言い方の方が多いのではないかと思います。
その便利さを使うには、1+iの自然対数rが正規分布にしたがうとしよう、というだけで十分です(対数正規分布ですね)。
というわけで、「対数リターン」という呼び名を強調したいと思います。

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